生活習慣病
体に負担になる生活習慣から引き起こされる病気の総称が生活習慣病です。乱れた食習慣・運動習慣・喫煙・飲酒などが基礎にありますが、多くは生活習慣を正すことにより予防可能です。
生活習慣病は多くの疾病を含みますが、特に脂質異常症・高血糖・高血圧は症状が出にくいために放置されることが多く、しばしば内臓脂肪型肥満を呈したメタボリックシンドロームへ移行してしまいます。
内臓脂肪が蓄積すると、ホルモン様物質の悪玉アディポサイトカインが増え、糖尿病や高血圧、動脈硬化を進めます。一方で、動脈硬化を予防する働きを持ち、脂肪細胞から分泌される善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンが減ります。
また肥満を基礎疾患に睡眠時無呼吸症候群を発症することはよく知られています。
このように肥満(内臓脂肪型肥満)は動脈硬化の危険因子となる様々な疾患の原因になっています。しかし個々の疾患の治療だけでは、内臓脂肪の蓄積はなかなか改善しません。これはあたかも、川の上流と下流の関係に例えられます。
そこで当院ではメタボリック外来を通して、現状がメタボリックシンドロームに該当するかどうかの判定を行い、既にメタボリックシンドロームと診断済みの方も含めて、肥満(内臓脂肪型肥満)の改善に結び付くような生活習慣をアドバイス致します。また関連する睡眠時無呼吸症候群や脂肪肝などの有無の検査、必要ならば内臓脂肪を改善する治療薬の処方などを行って参ります。
なお、当院では平成25年6月から糖尿病の管理指標であるHbA1cと脂質代謝異常の検査項目である血中脂質(総コレステロール、HDL-cho、中性脂肪 )を一台で迅速(約15分)に測定できる機器を院内に導入して、生活習慣病の診断と治療の向上を実現しています。
肥満とは
肥満とは体脂肪が過剰に蓄積した状態です。
簡単に言うとからだが太っているという意味ですが、医学的に「肥満」という言葉を使うときには、脂肪が一定以上に多くなった状態のことを言います。
人のからだはさまざまな物質でできていますが、おおまかには、水分と筋肉に多い糖質とたんぱく質、骨に多いミネラル、脂肪でできています。肥満というのはこの中の脂肪の割合が多過ぎる状態を言います。従って、体重が重くても、ボディビルダーやハンマー投げの選手など筋肉や骨の割合が多い人は脂肪が少ないため、肥満ではありません。
現在、肥満の判定は、身長と体重から計算されるBMIという数値で行われています。
日本肥満学会が決めた判定基準では、統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI22を標準とし、25以上を肥満として、肥満度を4つの段階に分けています。
肥満度の判定基準(日本肥満学会2000)
BMI | |
---|---|
低体重(やせ) | 18.5未満 |
普通体重 | 18.5以上 25未満 |
肥満1度 | 25以上 30未満 |
肥満2度 | 30以上 35未満 |
肥満3度 | 35以上 40未満 |
肥満4度 | 40以上 |
メタボリックシンドローム
「肥満は万病のもと」と言われています。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満が原因で血管や神経、ホルモンなどに障害がおこり、様々な生活習慣病を引き起こします。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、内蔵脂肪型肥満に加えて、高血糖や脂質異常症、高血圧のうち、いずれか2つ以上を併せもった状態を指します。その診断基準は次のように定められています。
メタボリックシンドロームの診断基準
内臓脂肪の蓄積 | |
---|---|
腹囲(へそ周り) | 男性 85 cm以上 女性 90 cm以上 (男女ともに、腹部CT検査の内臓脂肪面積が100cm²以上に相当) |
内臓脂肪の蓄積に加えて、下記の2つ以上の項目があてはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
脂質異常 | |
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中性脂肪 HDL-cho |
150 mg/dL以上 40 mg/dL未満 のいずれかまたは両方 |
高血圧 | |
収縮期血圧 拡張期血圧 |
130 mmHg以上 85 mmHg以上 のいずれかまたは両方 |
高血糖 | |
空腹時血糖 | 110 mg/dl以上 |
肥満の検査と治療
当院では、特に軽度の肥満症である、肥満(1度)の方の受診を積極的に勧めています。言わば前糖尿病状態であると考えられるからです。
内蔵脂肪型肥満に高血糖や脂質異常症、高血圧が合併したメタボリックシンドロームに移行すると、動脈硬化の発症頻度が一気に高まります。そのため減量が求められますが、食事や運動療法だけでは効果が十分でない場合、薬物療法として漢方薬の防風通聖散などを選択します。
また、肥満症を基礎疾患に睡眠時無呼吸症候群(SAS)が発症しますが、メタボリックシンドロームとSASは相互に影響しあうことが知られています。メタボリックシンドロームに伴うSASに対し、食事療法や運動療法および薬物療法を併用することで、改善効果が期待できます。SASの中でも肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、減量により症状が軽減する可能性があります。
当院では肥満症の方については、次のような検査を行った上で、総合的に治療方針を決定しています。
- メタボリックシンドロームに該当するかを診断基準に照らして判定する
- 簡易型PSG(終夜睡眠ポリグラフィー)検査でSASの有無を調べる
- 腹部エコーにより脂肪肝などの有無を調べる
健診などで既にメタボリックシンドロームと診断済みの方は、食事や時間に関係なく受診可能です。またメタボリックシンドロームが疑われる方は、平日午前中の空腹時に受診をして下さい。なお検査や治療は、全て保険診療の範囲内で行っています。