気管支ぜん息
世界各国で年々アレルギー疾患の患者数は増加しており、日本でも20年前と比べて気管支ぜん息の患者数は2倍となっています。症状から見た気管支ぜん息は、発作性に笛声喘鳴(てきせいぜんめい)を伴う呼吸困難を繰り返し起こす慢性疾患です。その病理像は、①気道の可逆性の狭窄病変、②持続性炎症、③気道リモデリングと呼ばれる組織変化を特徴としています。
しかし気管支ぜん息と紛らわしい症状を呈する疾患も多く、鑑別に困難を伴うこともあります。特に2歳未満の小児のぜん息を乳児ぜん息と呼びますが、年齢的にまだ気管支が細く喘鳴(ぜんめい)を起こし易いため、ぜん息の診断はとても困難です。
一般的には次のような症状があったときにぜん息を疑います。
- 急に息苦しくなり、息を吐くとゼーゼー・ヒューヒューという(喘鳴:ぜんめい)
- 季節の変わり目などにいつもは感じない息切れがある
- 夜から明け方にかけてひどい呼吸困難を感じて目が覚める
- 運動(動いた)後に息苦しくなる
- ほこりや特定の抗原を吸い込むと息苦しさを感じる
- かぜを引くと咳と伴にゼーゼーし、治るのに10日以上かかる
当院では気管支ぜん息の診断や鑑別に困難を伴うときには、呼気中NO(一酸化窒素)濃度を測定して、診断の大きな一助としています。これは、ぜん息の患者さんでは気道で一酸化窒素合成酵素が誘導され、多量のNOが産生されて呼気中に排出することを応用しています。
ぜん息はなぜ「ゼーゼー」するのでしょうか
気管支ぜん息は、「ゼーゼー」とか「ヒューヒュー」という胸の音(喘鳴:ぜんめい)が特徴です。特に夜寝ている時や朝方起床前に多く、これは空気の通り道である気管支が狭くなリ、狭い所を空気が通過したり、通過する空気が気管支の壁を震わせるために生じているのです。
気管支ぜん息では、気管支が狭くなる(=気道狭窄)理由は大きく3つあります。
- 気管支平滑筋収縮
- 気道粘膜浮腫
- 気道分泌亢進
これらによって気道の気流制限が引き起こされ、ぜん息症状に至ります。
気管支ぜん息の原因
気管支ぜん息は、遺伝的素因だけでなく、環境要因も加わって発症するものと考えられています。これらの因子が作用して、気道に慢性アレルギー性炎症が生じ、さらにその結果、気道の器質的変化であるリモデリングが起きて、気道過敏性を獲得します。
一旦、気道過敏性を獲得すると、ダニ、ハウスダスト、花粉、カビ、ペットなどのアレルゲン(抗原)やウイルスなどの感染、タバコや運動、気候、ストレスなどが誘発・悪化因子となり、気道の気流制限が引き起こされて、ぜん息症状に至ります。
小児ぜん息のほとんどと成人ぜん息の60%は、アトピー型ぜん息と呼ばれる、遺伝的素因と伴に発作を起こすアレルゲンが関わっているタイプのぜん息です。一方、遺伝との関係が少なく、発作を起こすアレルゲンがはっきり分かっていないタイプのぜん息もあり、これは非アトピー型ぜん息と呼ばれます。
また小児ぜん息では、思春期までに完治する人もたくさんいますが、成人になってぜん息と診断されれば、ほとんどの人(約90%)が完治せず、治療を継続することになります。
気管支ぜん息の治療
薬による治療は発作を起こさせないための薬と発作時に症状を抑える治療があります。
発作予防薬としては、現在の薬物療法の中で最も重要視されている、吸入ステロイドと呼ばれる気道炎症を抑える薬があります。
内服薬には気管支拡張薬(テオフィリンやβ2刺激薬)、抗アレルギー薬(ロイコトリエン拮抗薬)などがあります。当院では症状や体質に合わせて患者さまに最適な処方を致します。
小児の方で毎日吸入をすることが望ましい場合は、一週間ほどを目安に自宅用ネブライザーの貸し出しも行っています。