アレルギー疾患
アレルギー疾患は小児期に多くみられ、年齢が進むとともに、発症するアレルギー疾患が移行する特徴(アレルギーマーチ)があります。
アレルギー疾患には大きく、ぜん息、鼻炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などがあります。
このうち、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎は乳児期から2歳までに、ぜん息は4歳までに、90%が発症します。これに対し、アレルギー性鼻炎は学童期から増加します。
アレルギー疾患は年々増加しており、ぜん息は10年前の1.4倍になっています。またアレルギー性鼻炎は幼児期に発症するなど、低年齢化傾向がみられます。
ぜん息とアレルギー性鼻炎
呼吸によってアレルギーの元となる物質(吸入アレルゲン)が体内に入ると、様々な症状を引き起こします。アレルギー性鼻炎とぜん息はアレルゲンの吸入によって起こる病態に共通点が多く、ぜん息の大人の60%がアレルギー性鼻炎を合併します。またアレルギー性鼻炎の人の30%がぜん息を合併します。
これは「one airway, one disease」(一つの気道、一つの病気)という言葉で現わされ、まさに「アレルギー疾患は合併する」と言えます。
吸入アレルゲンには大きく、室内アレルゲンと室外アレルゲンがあります。
室内アレルゲンには、ハウスダスト、ダニ、イヌ、ネコ、ハムスターなどがあり、これらは1年中(通年性アレルゲン)みられます。
室外アレルゲンには、季節性アレルゲンでもある花粉、真菌(カビ)類、野外昆虫類などがあります。
春の花粉は、スギ、ヒノキ、シラカンバ、ハンノキ、ハルガヤなどの木が中心です。
夏の花粉は、オオアワガエリ、カモガヤなどの主にイネ科植物です。
秋の花粉は、ヨモギ、ブタクサなどの雑草類になります。
食物アレルギー
食物アレルギーは、日本では乳幼児の5~10%、学童以降の1~2%にみられます。
食物を食べてから2時間以内に発症することが多く、90%はじんま疹などの皮膚症状が中心です。しかし全身症状も示すことがあり、そのうち10%はアナフィラキシーショックを呈します。
一般に食物アレルギーの原因となる食物は、小児では卵、牛乳、小麦、ソバ、魚介類、ピーナッツ、果物、大豆の順に多くなっています。このうち乳幼児では、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の割合が高いのも特徴です。大人ではエビ・カニなどの甲殻類、魚介類、ソバ、小麦、果物が多くなっています。
成人食物アレルギーには小児には見られない、次の2つの型があることが知られています。
原因食物を食べただけでは無症状ですが、中高生が原因食物(小麦やエビ・イカなど)を食べてから2時間以内に、サッカーやテニスなどの激しい運動をすることで誘発される、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)が一つです。
もう一つは果物や野菜を食べた後に口腔や咽頭がイガイガする、口腔アレルギー症候群(OAS)があります。これは学童期以降の30歳代までの成人に多く、あらかじめ花粉で感作された口腔粘膜に(交差抗原性を持つ)野菜や果物などが触れて起こる、接触じん麻疹の一種です。
食物アレルゲンと吸入アレルゲンの検査
食物アレルギーの検査として、当院でも行っている血液検査の一つであるCAP法(FEIA)があります。特異的IgE抗体の抗体価を測るもので、スコアと抗体価で陰性陽性を判断します。しかし、スコアや抗体価の陽性が必ずしも食物アレルギーの出現を意味するものではなく、誘発試験である食物負荷試験を行うかどうかの目安として利用されます。
また食物アレルゲンと吸入アレルゲンの代表的な39種類を組み合わせたFEIA法 (蛍光酵素免疫測定法)のView 39は、わずかな血液量で実施できるのでアレルギー検査として重宝されており、当院でも採用しています。
紹介医療機関
- 武蔵野赤十字病院
- 東京都立多摩総合医療センター 他