インフルエンザ
インフルエンザウイルスはもともと野生の鳥に分布していましたが、長い年月を経てヒトに伝播するようになりました。現在では、A型、B型、C型の3つの型が知られています。さらにA型インフルエンザは、表面のたんぱく質であるヘマグルチニンやノイラミニダーゼの抗原性の違いから、いくつかの亜型が存在します。
トリやヒトのインフルエンザがブタに感染し、これらがブタの体内で遺伝子再集合を起こすと、新型インフルエンザ発生の原因になります。ヒトに感染しやすいように変異すれば、かつてのスペインかぜやアジアかぜのようなパンデミックにつながることもあります。
インフルエンザは主に飛沫感染によって伝染します。潜伏期は1~2日と極めて短く、48時間以内には急激に症状を発症します。最初は40℃近い発熱を発症し、続いて頭痛・関節通などの全身症状と鼻汁・咽頭痛・咳などの呼吸器症状が現われます。
治療は、できるだけ早期にノイラミニダーゼ阻害薬などの抗インフルエンザ薬や対症療法による治療を開始し、十分な休養と水分・栄養を摂ることです。特にノイラミニダーゼ阻害薬は、従来の内服薬や吸入薬のほか、外来で受けられる点滴薬も登場し、うまく吸入薬が吸えない幼児や全身状態の悪い高齢の方などに威力を発揮しています。
個々人でできる予防法としては、かかる前ならばこまめな手洗いとうがい、かかった後ならば咳エチケットやマスクの着用、無用な外出を避けることなどが挙げられます。インフルエンザの予防接種は、接種後2週間から効果が出始め、約5ヵ月間予防効果が持続します。
なお2012年4月に学校保健法の改正があり、インフルエンザの出席停止期間は、「発症したあと5日を経過し、かつ、解熱をしたあと2日を経過するまで」とされました。
肺炎
細菌やウイルスなどの病気を起こす微生物(病原微生物)が肺に入り感染し、肺が炎症を起こしている状態を「肺炎」といいます。
病原微生物の多くは空気と一緒に身体の中へ入ってきます。普通は、人間の身体に備わっているさまざまな防御機能が働いて、これを排除します。
しかし、何らかの原因で体力や抵抗力が落ちていて、病原微生物の感染力の方が上回ると、肺炎になります。 肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に続いて、日本人の死亡原因の第4位になっている病気です。
高齢者や慢性の病気を持っている方などは、とくに肺炎にかかりやすく治りにくい傾向があるので、予防や早めの治療が重要です。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、乾いたしつこい咳を特徴とする呼吸器の感染症です。咳は夜間に多く、ゼーゼーという喘鳴や高い熱、頭痛、吐き気などを伴うこともあります。肺炎マイコプラズマという極めて小さな細菌が原因で、抗菌薬で治療します。
マイコプラズマは、くしゃみや咳の飛沫で感染します。感染から発病までの潜伏期間は1から3週間くらいです。3歳から7歳までの小児が全体の患者数の7割を占めますが、大人や高齢者への感染もけして少なくありません。
抗菌薬はマクロライド系が従来投与されていましたが、近年マクロライド系抗菌薬に耐性を持つ菌が増えており、効果が不十分なこともあります。そのため抗菌薬の選択が難しくなっています。
かかるのを予防するには手洗いやうがいを習慣にし、咳が続くときは、カゼやインフルエンザのときと同じく、早目に受診することやマスクの着用が周囲の人に広めないために必要です。
肺結核
日本の結核罹患率は1997年から1999年まで一時上昇しましたが、その後減少傾向となっています。近年の結罹患率は、人口10万人に対して約16.7人で、新規登録患者数は年間2万1千人程です。その内訳は70代以上の高齢者が主となっています。
しかし多くの場合、結核菌に感染しても体内に封じ込められて発病することなく経過します。
肺結核発病のリスクファクターである、HIV感染・ケイ肺症・胃切除・免疫低下などが重なり、ある一定割合の人が発病へと至ります。
肺結核の症状
肺結核は初期の段階では、発熱・倦怠感・食欲不振・体重減少などの一般症状を呈します。
進行した段階では、肺結核特有の症状である、咳・痰あるいは血痰が現れるようになります。
- 一般症状
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- 発熱
- 発汗
- 体重減少
- 食欲不振
- 倦怠感 など
- 呼吸器症状
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- 咳
- 痰
- 血痰
- 喀血
- 胸痛
- 呼吸困難 など
2週間以上続く咳、痰は肺結核の可能性も否定できません。
肺結核の診断
肺結核が疑われる場合、まず胸部X線撮影を行います。
次に喀痰の抗酸菌の塗抹・培養を行いますが、塗抹が陽性のときはPCR検査を実施します。
喀痰の提出ができない場合は、T-SPOT.TB(インターフェロン-γ 遊離試験)を行うことがあります。この検査が陽性のときは、活動性の肺結核も否定できないため、病院へご紹介の上、気管支鏡検査などを考慮します。